こんにちは!「AIいっぽラボ」の所長です。
突然ですが、皆さんはAIに対して「計算や論理クイズなら絶対に間違えない」というイメージを持っていませんか?
ひつじさんもちろんです! コンピューターなんだから、計算なんてお手の物ですよね?
…でも実はさっき、ちょっとひっかけ問題を解かせたら自信満々に間違えちゃったんです。
AIって、意外とうっかり屋さんなんでしょうか?



ふふ、そうなんです。実は今の生成AIは、直感で答えようとして間違える、人間のような『早とちり』をすることがあるんですよ。
今回は、そんなAIのうっかりミスを防ぎ、論理力を覚醒させるプロンプト技術「Chain of Thought(思考の連鎖)」について解説します。
理論:AIは「考える」前に「喋って」いる
なぜ、優秀なはずのAIが簡単なミスをするのでしょうか?
それは、生成AIの仕組みに理由があります。
AIは、質問に対して「頭の中でじっくり考えてから」答えているわけではありません。これまでの文脈から「次にくる確率が高い言葉」を予測して、即座に出力しています。
つまり、人間で言うところの「直感(反射)」で答えている状態に近いのです。



例えば『1000円の商品を3割引きで買ったらいくら?』って聞かれたら、人間もパッと『700円!』って答えられるよね。
でも、もっと複雑な計算を暗算でやろうとすると、人間だって間違えちゃう。AIも同じなんだ。
解決策:魔法の言葉「ステップ・バイ・ステップ」
では、どうすれば間違いを減らせるのでしょうか?
人間が複雑な計算をする時と同じように、「途中式(思考のプロセス)」を書かせればいいのです。
これを実現するために、プロンプトの最後にある一言を加えます。
Geminiへの指示(プロンプト)
(質問や課題の内容)
**ステップ・バイ・ステップで考えてください。**
たったこれだけです。
ちなみに英語で指示する場合は “Let’s think step by step” と書きます。
この言葉を見ると、AIは「あ、いきなり答えを出すんじゃなくて、順序立てて説明しなきゃいけないんだな」と理解し、論理的な思考モードに切り替わります。
「思考の連鎖(Chain of Thought)」とは?
ここで少し専門的な解説をします。
この「ステップ・バイ・ステップ」という指示によってAIの推論能力を引き出す手法を、専門用語で「Chain of Thought(チェイン・オブ・ソート)」、日本語で「思考の連鎖」と呼びます。
Googleの研究チームなどが発表した論文でも、この手法を使うことで、AIの数学問題や論理クイズの正答率が飛躍的に向上することが証明されています。
- 通常(Chain of Thoughtなし):いきなり「答え」を出そうとするため、計算ミスや論理の飛躍が起きやすい。
- Chain of Thoughtあり:「まずAです。次にBなので、Cになります」と、思考を「鎖(チェーン)」のように繋げながら結論を導き出すため、間違いが激減する。



数学のテストで『途中式も書きなさい』と言われた経験はありませんか?
あれと同じで、思考の過程を書き出させることでAI自身のケアレスミスを防ぐテクニックなんです。
検証:論理クイズで対決!
本当に効果があるのか、有名な「ひっかけクイズ」で検証してみましょう。
【問題】
バットとボールは合わせて1ドル10セントです。
バットはボールより1ドル高いです。
ボールはいくらですか?
直感で答えると「10セント」と言いたくなりますが、正解は「5セント」です。
(バット1.05 + ボール0.05 = 1.10ドル)
【CoTなし】普通に聞いた場合
指示:
バットとボールは合わせて1ドル10セントです。バットはボールより1ドル高いです。ボールはいくらですか?
Geminiの回答(失敗例)
ボールは10セントです。



ああっ! 引っかかっちゃいましたね。自信満々に間違えてます……。
【CoTあり】魔法の言葉を入れた場合
指示:
バットとボールは合わせて1ドル10セントです。バットはボールより1ドル高いです。ボールはいくらですか?
ステップ・バイ・ステップで考えてください。
Geminiの回答(成功例)
ステップ・バイ・ステップで考えましょう。
- ボールの価格を $x$ とします。
- バットはボールより1ドル高いので、バットの価格は $x + 1$ ドルです。
- 両方の合計が1.10ドルなので、式は $x + (x + 1) = 1.10$ となります。
- $2x + 1 = 1.10$
- $2x = 0.10$
- $x = 0.05$
したがって、ボールの価格は 5セント です。



お見事!
いきなり答えを出そうとせず、数式を立てて順序よく計算していますね。
これが『思考の連鎖』の威力です。
まとめ:「途中式」を書かせればAIは間違えない
いかがでしたか?
- Chain of Thought(思考の連鎖):
- AIにいきなり答えを出させず、思考のプロセス(途中式)を出力させる技術。
- 魔法の言葉:
- 「ステップ・バイ・ステップで考えて」
たった一言追加するだけで、AIの論理的思考力は劇的に向上します。
計算問題だけでなく、「論理的な文章を書いてほしい時」や「複雑なプランを立ててほしい時」にも、この言葉は有効です。



急かされると焦っちゃうけど、『順序立てていいよ』って言われると落ち着いて考えられるんだ。
難しいお願いをする時は、ぜひこの魔法の言葉を添えてみてね!



AIに『考える時間』を与えてあげる。これもまた、使い手である私たち人間に必要な『AIへの思いやり』の一つかもしれませんね。






